ゾウとウマとイヌと……

ショートショート

 動物園の檻の中から、ゾウはウマとイヌを見下ろした。
「ねえ、ウマとイヌ」
「ブルル……どうしたんだい?」
「君たち最近、太ったんじゃない?」

 ウマとイヌは少し考えてから答えた。
「クゥ~~~ン、確かにそうかも」
「ヒヒン、人間の前でカニ歩きしたら喜んで……食べ物いっぱい貰ったからね」
「う、ウマがカニ歩き……」
「ワンワン! そういえばボクも人間みたいに後ろ足で立ったら、喜んで食べ物いっぱいくれたんだよ。だから太ったのかも……」

 ゾウは少し考えてから言った。
「人間って喜ばせると、よく食べ物くれるよな……でも、小生としては芸を見せて欲しいんだよ」
 ウマは不思議そうに聞き返した。
「人間が芸?」
「ああ、あの器用な前足で、小生たちの身体を洗ったり、毛並みを整えてくれるだろう?」
「「ああ、確かに!」」

 ウマとイヌが納得した様子で叫ぶと、更にゾウは言った。
「ギブアンドテイクっていうのかな。こっちが芸をしたらやっぱり向こうも芸をするべきだと思うんだよね。まあ、食べ物もゼンゼン嬉しいけどさ」
「ワンワン! その気持ちわかるわ~ あの不思議な前足って本当に器用に動くもんな」
「ブルルルル…… またナデナデして欲しいなぁ」


 その話を聞いていたカラスは、羨ましそうに言った。
「カァカァカァ お前らはいいよなぁ。オイラなんて……家の前で鳴いても、ゴミ捨て場を漁っても、線路の上に石を置く芸をしても、ニンゲンに褒められたことなんて一度もないぜ?」

 その話を聞いたゾウは、苦笑交じりに答えた。
「まずは君が、ネズミとか有害な昆虫を食べて駆除しているということを……アピールしないと」

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